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第3回 glovia.comプレミアクラブセミナー開催レポート

ダブル基調講演1、個別受注生産における攻めのコントロール管理法の秘訣

株式会社 戦略情報センター POP研究所所長
山口 俊之


1944年生まれ、慶応義塾大学工学部電気工学科卒業。株式会社東芝勤務を経て、現在は株式会社戦略情報センター POP研究所所長として工場管理用LANやPOPシステムの構築支援に従事している。また、1200社もの情報活用支援事例の他、『月間工場管理』への執筆や著作多数。


第3の利益に着目。管理することで隠れた利益を発掘

製造業において得られる利益には第1、第2、第3の利益があり、とりわけ隠された利益ともいえる「第3の利益」に着目するべきことが分かります。「第1の利益」とは売価と製造原価の差である営業利益で、長いスパンでは必ず売価が下がるため、次第に利益は得られにくくなっていきます。「第2の利益」は製造原価のうち人件費や原材料費など直接費を圧縮することで得られるものですが、NC工作機械やロボットなどによる自動化はすでに限界に近づいています。着目すべき「第3の利益」とは、人・モノ・金・情報を管理することによって得られる管理利益で、ここにはまだ発掘されていない利益が残されています。 しかし私が見てきた工場において「第3の利益」創出に取り組むところはまだ少なく、総じて関心は低いといわざるを得ません。その理由の一つは「管理」の意味がやや漠然としているからと思われます。

じつは日本語の「管理」には2つの意味が存在し、それを混同して運用されている場合が多いと経験から感じています。それは経営・運営を意味する「マネジメント」と、統制・制御を意味する「コントロール」の意味が混在しているということです。
また、それぞれの目的の意味も異なります。前者は業績の達成であり、後者では目標を達成すること、が目的となります。
今日お話するのは、コントロールの意味の管理であり、ここでの管理に求められる重要なこととは、生産現場の管理=コントロール(生産コントロール管理)によって生産、品質、原価が適正化されなければならないことです。そして実態値を正確に把握することも求められます。
生産コントロール管理では、資材所要量を計算し、調達納期の目標日を決め、納入日をコントロールしなければなりません。在庫については残念ながら、決算報告書記載のための在庫量が把握されているに過ぎない企業がほとんどです。個別受注生産においては材料、仕掛品、製品とも一品一品の在庫目標値を設定し、製造リードタイムを加味して在庫目標数と目標在庫時間を決め、目標値になるようコントロールする必要があります。
品質管理は多少なりともコントロールされてきた業務機能ですが、品質のばらつき、不良品の発生を抑えるために品質の目標基準値を定め目標値になるようコントロールされなければなりません。特に求められるのはロットごとの不良品発生を迅速に把握するリアルタイムコントロールです。また品質記録が磁気媒体ではなく紙媒体に記録保存され、もっぱらクレーム発生時のトレースに使用されるのみで、品質管理に活かされていないのも日本独特の事情です。
原価コントロール管理では、実績原価をしっかり管理し、管理目標値内に抑えこむよう原価の原単位を決め、コントロールしていきます。コントロールする原単位は、原材料使用量、作業工数、機械占有時間、その他変動費です。実際に、日ごとの実績原価を出してみると出荷数によってプラスマイナス20、30パーセントのブレを生じることが少なくありません。ブレは、その分コストダウンの余地であることを示していると考えてください。

第3の利益を引き出すコントロール管理の要点

「第3の利益」を得るためには、各コントロール管理において、計画・目標を立て(Plan)、指示・実行し(Do)、実態把握と評価(Check)、実態が目標に近づくよう対策を講じる(Action)、いわゆる「PDCAサイクル」を回しながら製造原価を抑えていきます。

Plan
生産管理では調達日限、工程日限、最終納期の目標を立てます。在庫管理では目標在庫数と時間を決めます。設定以上の時間が経過した在庫についてはアラームで知らせるなどの仕組みも必要です。工数管理では目標の工数を立て、「この作業は1時30分までに終えて下さい」など目標達成に期限をつけることが重要です。実績管理原価では4つの目標原単位(原材料費、人件費、機械償却費、その他変動経費)の目標原単位を決めます。品質管理では良品率、歩留まり率を決めます。そして稼働管理では設備総合効率の目標を設定します。
Do
Doは作業者の実作業ゆえに、指示内容をしっかり確認し、目標値を念頭に置き、ペースメーカーとなる補助装置などを利用し、常に目標と実績を比較しながら作業スピードをコントロールする必要があります。
Check
実態を把握し評価するCheckでは、精度の高いデータ把握が重要です。しかし多品種生産では全く異なる工程が混在し、小ロット生産では立ち上がりロスが多く、また段取りから生産ピークが短い、短期間生産では歩留まり率が十分上がる前に生産が打ち切られるなど、生産現場の実態把握は困難になるばかりです。コストダウンの有力手法であるデータサンプリング法も、サンプル対象が細切れで、かつダイナミックな動きをするため使えません。この状況下で精度の高いデータを取るには全てのデータを自動的に取得する手法以外にありません。その上で、目標と実績の差異を定量的に評価し、差異の原因や条件を分析していくことが重要です。じつはコントロール管理の課題のかなりの部分は、このCheckにあるともいえるのです。
Action
実績と目標の差分を縮めていくためにActionを打つステージでは、作業速度を上げる、作業手順、作業のやり方を変える、準備、段取り、始末など非付加価値時間を抑える、調達、配膳、準備などモノづくりの仕組みを変えるなどが求められます。ケースによっては、人・モノ・金などの資源を入れ替えるなど「マネジメント管理」が介入してくることもあります。

個別受注生産における攻めのコントロール管理法のシナリオと具体策

個別受注生産において利益を上げるには、「第3の利益」を導き出すことが必要です。 それは、次のシナリオに沿っていきます。

  1. 経営課題を明確に提示
  2. 全てのデータを自動的に取得できるシステム構築
  3. 情報とデータの活用
  4. コントロール管理を念頭に置いたPDCA
  5. 課題解決と利益獲得

その上で重要になるのが「個別受注生産の損益管理」です。
前述したように、原価管理の日ごとの実績をデータ化してみるとブレ幅は20、30パーセントに及ぶのですが、個別受注生産ではこのブレ幅がさらに激しくなってきます。原材料や外注加工費はだいたい予想範囲に収まるのですが、工数時間の変動が50パーセントから300パーセントにもなるのです。つまり個別受注生産の損益は作業工数コントロール管理の善し悪しに左右されるのです。
作業工数のコントロール管理では、作業ごとの目標工数を提示することになります(Plan)。そして目標工数を意識して作業を行い(Do)、実態把握と評価(Check)を行います。目標工数のチェックは秒単位の精度とペーパーレス、入力のたやすさが求められます。
私が数多くの工場で構築してきたシステムでは、作業者全員に手帳大のポータブル端末機を導入しました。端末機には「着手」「中断」「終了」の3つの押しボタンとカーソルキーなどが備わっていて、正確な工数時間の記録と目標時間との差分を表示、無線でPCにデータを送り、製番、作業ごとの「カイゼンカード」をプリントアウトすることができるのです。このシステムを導入した特殊車両の組み立て工場では、導入3年で目標工数を4割削減、見積原価の4割削減を実現できました。
コントロール管理は組織の各階層においてなされるのですが、とりわけ重要と思われるのは現場作業者です。作業工数、品質、生産進捗などの動向をリアルタイムに把握でき、必要があればただちに管理者が介入、支援可能なMRP、さらにはERPとリンクする新たなシステムの再構築が求められています。

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