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- 東京シャツ株式会社
代表取締役 鈴木 正利 氏
インタビュー
- 東京シャツ株式会社
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[ 2008年9月4日掲載 ]

東京シャツ株式会社 会社概要
本社 |
東京都千代田区東神田2-8-12 |
|---|---|
設立 |
1949年10月17日 |
年商 |
83億円(2008年2月末日現在) |
従業員数 |
500名 |
業種 |
衣料製造、小売り |
|---|---|
事業概要 |
紳士・婦人用品の製造および販売で153店舗を展開(2008年8月現在) |
ホームページ |
百貨店向けの衣料製造卸から、製造小売り:SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)へ、完全な業態転換を実現し、10年あまりの間に150店舗以上を展開するまでの成長を遂げた東京シャツ。通常では成しえないような見事な変革と、大きな飛躍。その原動力となったのは、企業トップの未来を拓く強い意志、そして的確な判断と、ITを活用した企業の体制作りにあった。

製造卸からSPAへ転換しようと決心した理由は2つあります。ひとつは、当社の規模があの当時で売上げ30億円規模と小さかったこと。同業他社は100億円規模が多くあり、同じ土俵で戦ってもモノ、カネ、ヒト、いずれの面からも勝てないと思っていました。
もうひとつは、ブランド崇拝が終焉し、お客様の意識がより“モノ本位”へと変わってきたことです。私が納入先のお店で販売支援をしていた時、お客様からこう質問されました。「このワイシャツ、ブランドのタグが付いていなかったら、値段はいくらになるの?」と。例えば、私たちが卸しているシャツが店頭に並ぶ時には、ブランドのライセンス料や納入先の販管費などが上乗せされ、倍以上の値付けがされていることもあります。そういう流通の仕組みに気付き、そのモノ本来の価格で買いたい、というお客様が増えはじめたのです。そういった消費者の変化を店頭で肌で感じました。同じモノを売るなら、消費者に近い方がいい、とその時確信したのです。
1995年に社長に就任、その2年後に大阪・梅田に第一号店「ロンドンハウス」をオープンさせたのです。
「どうやって商品を売るか」よりも「どうやってお客様に店に入っていただくか」、ロンドンハウスを開店する際、この点に全力投球しました。それまで当社は製品を百貨店に卸していましたから、その信用ある看板があれば、黙っていてもお客様は来てくれていました。しかし、小売りを始めるとなったらそうはいきません。
お客様に店に入って、商品を手にとっていただくために、まず、できるだけ買いやすい価格でないといけない。さらに気に入ってもらって次も購入していただくために、品質の良いものを。さらに、同じワイシャツでも少しおしゃれなものを着たい、というニーズが高まってきた時期でしたので、トレンドを入れた製品も揃えよう、と。こうした「値頃感、高品質、高感度」をコンセプトとして店を立ち上げ、商品を揃えました。
私自身も店頭に立って接客や採寸をしたり、顧客管理や在庫管理や商品発注や生産依頼をするなど、店舗運営を一通り経験し、そのノウハウを蓄えていきました。店の業務を一気通貫して体験しておいたことが、その後の運営に大きく役立っています。
社長となってこの会社の舵取りを任されたからには、絶対につぶさない。必ず次の時代に生き残らせないといけない。このことは強く思っていました。というのも、私が社長に就任した当時、強い危機感がありました。
当社の取引先は百貨店だったのですが、百貨店との取引きは返品や値引き、さらに販売員の人件費や什器などの負担が重なって、どうしても利益が出にくい構造となっていたのです。当社は「最大であるより最良であれ」という社是のもと、適正な利益を出し続けることを目標にやってきたのですが、そのためにはまず、確実に利益が出せる構造に転換する以外に生き残る方法はないと思ったのです。それがSPA転換を目指す最大の動機でした。
こうした使命感、危機感もうまくはたらいたのでしょうか、店舗運営は思いのほか順調に進みました。ロンドンハウス開店から一年後、店舗での利益が、卸売りで稼いだ利益を上回ったのです。小売りという業態が卸よりもいかに利益を出す仕組みなのか、まさに目から鱗が落ちました。また、お客様と直に接し、手応えを感じられることも魅力でした。その後、卸先の百貨店が倒産し、当社も資金繰りに行き詰まり連鎖倒産しかかった時も、直営店の売上金のおかげで難を逃れた、というエピソードもありましたね。
こうしてSPAという業態に当社の今後の可能性を確信し、2004年に卸事業から完全撤退をしました。

現在、153店舗を出店するまでに成長できました(2008年8月現在)。在庫の回転率の高さと、粗利率の高さ、この2点が当社の店舗の大きな特長です。そのために、商品事業部が毎月の生産、販売、在庫の計画との差異を徹底的に検証及び分析したり、商品の納入先をきめ細かく設定するなど、随所に工夫しています。そんな時に威力を発揮しているのがITシステムです。ITシステムにより、新たに投入した商品の売上げがリアルタイムに把握できるので、売れる商品、売れない商品の見極めも早くなり、不要在庫の抑制や在庫回転率の向上、利益率向上が図れています。
こうした社内の体制を、私はもっとグレードアップしたい。そのための業務改善に取り組んでいます。例えば、新たに投入した商品の消化率を確認しながら、売れる、売れないを判断し、どのくらいの数値になったら追加発注をかけるのか、あるいは生産をやめるのか。誰がやってもぶれずに適切に判断し、常に一定レベルの成果が残せるようにしたいと思っています。そのために社員一人一人のスキルアップが必要ですし、またシステムの拡充も必要となるかもしれません。こうしてきちっと体制を固めることが、さらなる成長を目指すために欠かせないと思っています。
「改革」が叫ばれながらも、それがなかなか進められない企業や社会の現実を私たちは数多く目撃しています。しかし東京シャツ様は、業態転換という大改革を見事なまでに成し遂げました。「会社を残すという情熱」がその原動力だったと鈴木社長はおっしゃいます。店舗立ち上げ当時、熱意に燃えて立ち働く鈴木社長の姿が、お話しの中からも垣間見えました。
一方で「売り方よりも、店舗のつくりかたの方が大切」「“差別化”とよく言われるが、商品やサービスは逆に同質化しているのでは」など、市場や社会の情勢を的確に見きわめる“目”も鈴木社長はお持ちです。
たぎるような情熱と、大局を見失わない理性。この2つが絶妙にバランスした鈴木社長だからこそ、この困難な改革を成功に導けたのだと感じました。