Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

USX + WiPCom1000で売り場革新
接客起点のSCMで未来型百貨店を目指す

少子高齢化社会の到来、消費支出の減少、さまざまな業態の小売業の台頭……。百貨店のみならず流通業界は、激しい生き残り競争と大きな変革の時期を迎えている。こんな中、未来型の店舗を求め、新たな挑戦も見られるようになった。株式会社三越(以下、三越)が参加した「日本版フューチャーストア・プロジェクト」もその1つだ。三越では、プレミアムジーンズ約5,000着にRFID(無線ICタグ)を取り付け、お客様サービスと業務改善の効果を検証。「品切れのない仕組み」と「楽しい売り場」の実現に成功している。

「USXは,“ユビキタスワークスタイル・ソフトウエアパッケージ"と銘打ったパッケージ製品です。クライアントとして使うWiPCom1000等のUSX端末とサーバーに搭載するソフトウエアからなり,各種の通話機能とPIM(個人情報管理)機能や運用管理機能をワンパッケージで提供いたします。また、パッケージに含まれる専用のソフトウエア開発キットを利用して,企業の基幹業務システムなどと連携するアプリケーションを開発・実装することも可能です。USX端末は、RFIDタグの読み取りやバーコード端末としてご利用いただけます。」

日本を代表する老舗デパート三越の挑戦

株式会社三越
百貨店事業本部 商品統括部 商品システム推進担当 ゼネラルマネジャー

西田 雅一 氏

三越の創業は、延宝元年(1673年)。三井家の家祖である三井高利が江戸本町1丁目に越後屋呉服店を開いたことに始まる。以来、「店前現銀売り」など既存の商法をくつがえす斬新なビジネスモデルで、日本の小売業をリードしてきた

明治37年(1904年)12月6日、株式会社三越呉服店が設立され、日本で初めて「デパートメントストア宣言」をする。「百貨店とは何か」「お客様にどのような価値を提供できるか」を問い続け、商品だけでなく生活文化をも提案する日本型百貨店モデルを築き上げてきた。2004年で100周年を迎え、今、新たな実験と検証に挑戦している。それが、ITを利用した売り場の変革である。

「従来ITは合理化や省力化ばかりが先に立ち、丁寧な接客でゆっくり買い物を楽しむ百貨店とは逆行するイメージがありました。しかしITの力で売り場に情報を提供する、または情報を吸い上げることで、新しい価値を創造できると思うのです」と、株式会社三越 百貨店事業本部 商品統括部 商品システム推進担当 ゼネラルマネジャー 西田 雅一 氏は訴える。

確かにバックヤードでの発注や仕入、検品などはITを駆使することで、効率化が進められてきた。またスーパーなどでは売り場の無人化により、大幅な省力化を実現できた。だが、店員による接客中心の百貨店売り場で、ITがどのように貢献できるのであろうか。

「そこで、私たちはITを利用して『品切れのない仕組み』『楽しい売り場』を目指し、手始めに靴売り場で実験を開始しました」と、西田 氏は語る。


RFID(無線ICタグ)によるリアルタイムな在庫確認

接客中に必要となる情報は多い。その最も大きなものは在庫情報であろう。特に靴売り場では、標準サイズ1足のみを店頭展示しているだけで、他のサイズは倉庫にある。選び方によっては、頻繁に倉庫と売り場を往復しなければならない。これは、店員の手間にもなるし、待たされるお客様のストレスにもなる。

そこで、日本橋三越本店の婦人靴売り場では、靴にRFIDを貼り付けて倉庫に置き、売り場からリアルタイムに在庫確認できるシステムを作り上げた。2004年10月のことである。売り場のセルフ端末で在庫を検索できるし、店員の持つPDAからも確認可能とした。

この効果は大きかった。従来1人の接客に平均で13分かかっていたが、導入後は6分に短縮できた。さらに、短縮された時間内で、お客様に紹介できた靴は1.7足から3.1足に増加している。時間を半分以下に短縮しながらも、倍の靴をお客様に提案できているのである。RFIDを貼り付けた靴だけに限ると、対象商品の売上は約10%増となった。

この成功を受けて、2005年4月からは日本橋本店で本番稼働に入る。さらに8月からは銀座店、12月からは名古屋栄店で導入。2006年3月からは福岡店、札幌店、名古屋星ヶ丘3店舗での導入が進んでいる。

「課題もはっきりしました。まず、お客様がご自身でできるようにとセルフ端末を用意したのですが、セルフでの利用は少なく、店員が検索することで効果が上がりました。そして店員用に用意したPDAですが、中途半端の大きさでポケットにも入らない。充電池もすぐ切れてしまうということで常時携帯するメンバーが少なくなってしまいました。無線LANに接続して使用するのですが、接続まで10秒ちょっとかかり、これもストレスのようでした」と、西田 氏は振り返る。

そこで、次に計画されたのが、アパレル売り場での実験である。


経済産業省の実施する「フューチャーストア・プロジェクト」に参加

次に三越が実験を開始したのは2006年1月。銀座店2階のセレクトショップ「ニューヨークランウェイ」で、プレミアムジーンズ約5,000着にRFIDを取り付け、在庫管理や接客上の効果を検証した。

これは経済産業省の実施する「フューチャーストア・プロジェクト」(注)に参加したもので、RFID活用による顧客満足度や業務効率性の向上、RFIDの普及と実用化促進を狙いとしたものである。三越もこれに参加し、「コンシェルジュサービス」「顧客視点のスマートシェルフ」「e-リコメンデーション」「インテリジェントフィッティングルーム」など数種類の実験を行った。

これら実験で一貫して使用されたソフトウェアは富士通が先進技術を組み合わせて開発をし2005年7月より販売を開始しているユビキタス・ワークスタイル・ソフトウェアパッケージ「USX」であり、端末が「WiPCom1000」である。USXは各種実験のプラットフォームとして採用されたパッケージで、連絡を取りたい相手のプレゼンスをキャッチして、イントラネット/エクストラネット、内線/公衆網の区別なく、いつでもどこでも最適な手段で接続できる。移動の多い人間をとらえやすくなり、ビジネスのスピードアップと効率化を実現するソリューションとして、大きな注目を集めている。

また、USXと組み合わせて使用したWiPCom1000は、富士通系のベンチャー企業ネットツーコムが開発したモバイル端末である。IEEE802.11b無線LAN機能を標準搭載しており、コンパクトフラッシュ・スロットを利用することで、PHS端末やRFIDリーダーとしても活用できる。

「前回のPDAの反省もありまして、軽くて高性能、長時間使用できる端末を求めました。WiPCom1000は携帯サイズで重さは気になりません。通話もRFIDリーダーとしても、業務端末としても、マルチに使うことができます。これなら少ない店員でより密度の高い接客をする未来型百貨店を実現できると確信しました。USXとWiPCom1000は絶妙なコンビでした」と、西田 氏はUSXとWiPCom1000を高く評価する。


(注)日本版フューチャーストア・プロジェクト

経済産業省が実施した未来型店舗サービス実現のためのRFID実証実験。RFID(無線ICタグ)の導入に前向きな小売業5社と2005年11月から翌年3月までかけて開始した。多様な小売業態でのRFID活用による顧客満足度の向上および店舗業務の効率向上の可能性を探り、かつ国際標準に基づいたRFIDの小売業界への普及と実用化促進を図るのが目的。

次世代型在庫管理システム「顧客視点のスマートシェルフ」

婦人靴売り場で成功した在庫管理システムを、通常のアパレル売り場で展開したのが「顧客視点のスマートシェルフ」である。プレミアムジーンズ約110型5,000着にRFIDを取り付け、リアルタイムに在庫を確認できるようにした。

ジーンズを陳列する棚内部にRFIDリーダーを組み込み、店頭在庫状況を常時把握するとともに、倉庫在庫の情報と合わせて「電子棚札」に表示する。この電子棚札に採用されたのが紙タイプのディスプレイ「電子ペーパー」である。富士通が世界で初めて実用化した製品で、極めて省電力なうえ、曲げることもでき、今後の活用が期待されている。

お客様は「電子棚札」を見て在庫を確認できるし、同じ情報が店員の持つWiPCom1000にも表示される。店頭の商品補充忘れなども、WiPCom1000にアラーム表示できる仕組みも作り上げている。



[USXシステム概要図]

  • VIP客が来場した際”アクティブタグ”を経由しUSX端末へ顧客情報を受け取ることが可能です。
    CRMにもとづいた、より高度な接客を実現しました。
  • RFIDタグを読み込み、リアルタイムにUSX端末より在庫状況を参照することが可能です。
    その場で在庫確認ができるので、試着業務等の効率化を実現しました。

次世代型顧客管理システム「コンシェルジュサービス」

気軽なウインドウショッピングの際に、店員に話しかけられては煩わしいし、接客して欲しいときに店員がつかまらないのも困る。そこで、客側から自発的に店員をリモート呼び出し可能としたのが「コンシェルジュサービス」だ。

モニターとなるお客様約50人に、小型の発信器であるアクティブタグを貸与。アクティブタグの中央のボタンを押すと、かかりつけの店員が持っているWiPCom1000に呼び出しのメッセージとともにバイブレータが振動する。WiPCom1000には位置情報も表示され、お客様の場所がわかるし、購買履歴も一覧でき、的確な接客ができるようになっている。

「モニターとなって頂いたお客様の9割からおもしろかったとの評価を頂きました。また、ほとんどの方が、実験期間中に商品をご購入頂いています」と、西田 氏は効果を語る。

通常はかかりつけの店員が呼び出されるが、不在の場合は別の店員にメッセージが送られる。こうして、4人まで登録でき、このようなきめ細かな制御もユビキタス・ワークスタイル・ソフトウェアパッケージ「USX」が実現している。もちろん、USXであれば、アクセスポイントの範囲内なら無線LANで呼び出しできるし、範囲外の場合はPHSに自動で切り替わり捕まえることができる。状況(プレゼンス)に応じて、さまざまな手段で連絡でき、コミュニケーション効率を大幅に向上する。今後、構内構外を問わず、幅広い業務システムでの利用が期待されている。


「e-リコメンデーション」「インテリジェントフィッティングルーム」

「百貨店は極めて多くの商品を実際に目で見て、触って確かめることができます。これがネットショッピングではできないことです。反面一覧性や検索性に欠けるところが、店頭商売にはあります。この欠点を解消し、百貨店とネットショッピングのメリットを融合できないかと考えていました」と、西田 氏は語る。この1つの解決策として実験したのが「e-リコメンデーション」だ。

あらかじめカタログデータベースを作成し、それを売り場のタッチパネル端末から検索できるようにした。「ブランド」「シルエット」「ストレッチ」「ダメージ」を切り口として商品検索を行うことができ、「雑誌掲載商品」や「売れ筋トップ3」「おすすめ商品」の情報も一覧できる。

また、「インテリジェントフィッティングルーム」として、試着室(6室)に大型液晶パネル付きのIP電話端末を設置。試着室内でサイズを検索できるようにしたシステムを導入している。


接客起点のSCMの可能性

実験中、売上は10%以上アップし、今後の本格導入を期待させるものであった。「品切れのない仕組み」「楽しい売り場」という、当初の目的も達成している。

「もう1つ重要なのは、既存のSCM(Supply Chain Management)の限界を超える手応えがつかめたことです。従来のSCMは発注してから仕入れるまでがその範囲でした。しかし、今回の実験で、接客中の情報を起点とする仕入ができることが証明されました」と、西田 氏は強調する。

小売店におけるSCMは在庫確認、発注、納品、検品などのプロセスをシステム化して、省力化してきた。さらにこの流れに、売り場での接客プロセスも盛り込んで、発注を最適化できる可能性が出てきたのである。

従来、売り場の情報はPOS端末に頼っており、売れた品物(売れないでいる品物)の確認が限界だった。だが、USX+WiPCom1000があれば接客時にお客様から在庫はないかとたずねられた商品をその場で登録できる。またはお客様が店内の端末を自分で検索した商品や在庫を確認した商品の記録を蓄積し、発注の参考にできる。場合によってはそのまま売り逃がした商品を発注できる仕組みも作り上げることが可能だ。POS端末からは得られることのできない情報が、今回の実験で収集できたのである。

「品切れがなくなれば売上は確実に上がります。これら売り場の情報を収集できるのがIT化の大きな効果です。ITにより、さまざまな情報を店員やお客様に提供できるうえ、売り場の情報を集めることができます。お客様の欲しいと考えている商品を知ることができるのです。これが接客起点のSCMです」と、西田 氏はIT化に大きな期待を寄せている。


見えてきた今後の課題

もっとも、一連の実験でいくつかの課題も見えてきたし、これら課題を明確にすることも今回の実験の目的であった。

その1つがRFIDの読み取り精度の向上だ。婦人靴では固定された靴箱に貼り付けていたため、読み取りにほとんど間違いがなかった。だが、今回の実験では柔らかなジーンズに付けている。きちんと棚に陳列されている状態ならばいいが、お客様が手に取ったりすると位置がずれ、正確な読み取りができなくなることがあった。アパレルでのRFID導入では、これは重要な課題となるであろう。

次に無線LANの干渉。アクティブタグとWiPCom1000は無線LANで接続されているが、隣の売り場の無線LANと干渉して、うまく接続できないことがあった。急遽アクセスポイントを追加したほどである。

そして、「e-リコメンデーション」端末のコンテンツ作成である。充実したコンテンツは不可欠となるが、その作成とメンテナンスがボトルネックになる危険性がある。丁寧にわかりやすく作るのはいいが、それに経費と時間がかかりすぎるようでは、逆効果である。

「これら課題を浮き彫りにするのも今回の実験の目的です。これも含めて、実験は大成功でした」と、西田 氏は胸を張る。本番導入を見据え、多忙な日々がいよいよ始まろうとしている。新たな挑戦を開始し、小売業の革新を続ける三越。それを富士通の技術力が強力にサポートしている。



株式会社三越
創業1673年(延宝元年)
設立2003年(平成15年)9月1日
(旧・株式会社三越の会社設立は1904年12月6日)
本社〒103-8001
東京都中央区日本橋室町1-4-1
代表者代表取締役社長 石塚 邦雄 氏
資本金374億406万円
売上高8,338億7,000万円(2004年度実績)
社員数 7904名(2005年2月現在)
店舗数国内店舗 18店舗、小型店舗 69店舗、海外店舗 23店舗
事業内容

1673年(延宝元年)に創業した、日本を代表する老舗の百貨店。日本全国に店舗を拡大しているほか、アメリカやフランス、中国など世界各国に事業を展開している。300年という長い年月で築き上げた、信用とブランド力を維持しつつ、新たな商品文化の提案を積極的に行っている。

URL株式会社三越 (http://www.mitsukoshi.co.jp/)

パートナーメッセージ

富士通株式会社
小売・サービスビジネス本部小売・サービス第二営業部
稲毛 大輔 氏

平成16年度の経済産業省のRFID実証実験に続き、平成17年度の実証実験のテーマである三越様で未来型店舗を構想されている所に、弊社の電子カラーペーパー、RF-IDリーダ、アドホックリーダといった先進技術を紹介したところ、未来型店舗の検証を実施したい三越様と当社の考えが一致し、共同で実証実験に取り組むこととなりました。

7ヶ月という短い構築期間だったのに加え、様々なシステム・担当部署、会社が存在したので、その調整に苦労することもありましたが無事本番を乗り切り、そのシステムの利便性・活用性を体感して頂く事により実際に使用される売場の方から予想以上の好評価を得られた事は嬉しく思います

今後は、社内各事業部とて協力して流通業界電子ペーパーとUSX本導入初事例を目指し、更なる質の高い提案にて三越様のビジネスに貢献していきたいと思っています。

関連情報

GLOVIAご導入に関するお問い合わせ・ご相談

 電話でのお問い合わせ

0120-933-200 富士通コンタクトライン

受付時間 9時~17時30分
(土曜・日曜・祝日・当社指定の休業日を除く)

 Webでのお問い合わせ

入力フォーム

当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。