Webセミナー第2回
セミナー直前レポート
~2月8日の論点は?~
先進的に取り組んでいる一部企業を除き、内部統制にこれから取り組もうという企業が少なくありません。そして、他企業の状況を様子見したり、期待していた実施基準がそのまま使えないと悩んでいる企業も多いことでしょう。2月8日に行う来場型セミナーのパネルディスカッションでは、このような企業が抱えている「どこから手を付けていけばいいのか」「どこまでやればいいのか」「本当に、2008年3月までに対応を完了させなければならないのか」などの疑問に答える現実的な議論を目指している。その入り口として、各パネラーから企業が持つべきポリシーや取り組み方についての意見を聞いた。
これから取り組みを始める企業が持つべきポリシー

日経BP社
企画編集部長(前日経コンピュータ編集長)
田口 潤 氏

富士通株式会社
財務経理部 テクニカルアドバイザ
俵 一雄
(プリンシパルコンサルタント)
田口:内部統制の整備を巡って、様々な議論があります。米国では規制を緩める方向への動きがありますし、欧州はSOX法404条対応を行わないといっています。そうした中で、企業はどのようなポリシーを持って、取り組めばいいのでしょうか。
俵:お客さまには「松」「竹」「梅」があると話しています。「松」は米国の証券取引所に上場し、米SOX法対応が必要な企業30数社とその子会社です。そこでは非常に厳格な対応が求められるので、お金と人手を掛けてきちんと実施する必要があります。
それに対して、「竹」は国内の上場会社約3800社とその子会社で、その中にも上中下があります。シンプルな取引関係や関係会社の少ない会社からそうでない会社まで様々な幅があるので、分類すべき業務が少ない企業はそれほどお金を掛けなくて済みますが、様々な事業を展開している企業はコストも掛かります。
一方、「梅」は商法上の内部統制でよい会社。罰則規定もないし、業務を適正に行なっていることを株主に証明すればいいのですが、リスクを明確にし、コントロールポイントをしっかり押さえることは「竹」同様に必要です。
それから、「竹」にあたる会社には、会計士の奪い合いになるので早く確保してくださいと昨年来言ってきました。内部統制に関する業務が可能な会計士は1万5000名以下ではないかと思われ、既に手当てはほぼ終わっているかもしれません。
田口:そうした話を聞くと、2008年4月以降の最初の事業年度に間に合わない企業も出てくるという気がしますが、間に合わなくてもいいのでしょうか。

KPMGビジネスアシュアランス株式会社
執行役員マネージングディレクター
根本秀人 氏
根本:結果は「神のみぞ知る」ということですが、人材不足であることは間違いありません。昨年の春までは、お客様に対して「戦略的な外部コンサルタントの活用が鍵です」と申し上げていましたが、夏以降は、「現在契約している監査人をうまく活用してください」と言い方を変えました。
実施基準案においても、一定の条件つきで、監査人が企業・経営者に適切な指摘を行うことを認めています。外部に頼れる人材のいない状況下では、企業側で何らかの自助努力をし、早めに監査人とコミュニケーションすることが大切だと考えています。監査人は、白紙状態で「一体どうしたらいいのか?」と聞かれても、通り一遍の回答しか答えることはできません。しかし、企業が自主的に策定した方針などに対しては、ある程度、具体的なアドバイスをしてくれるはずです。大変な作業ですが、事ここに至っては、それ以外に方法はありません。
覚悟を決めて、できるところから手を付けていく
田口:企業はどこまで内部統制を整備すればいいのでしょうか。
根本:ゴールが確定しないかぎり、スタートしないという発想をしている限り、一向に作業は進みません。乱暴な言い方ですが、「できるところから、やるしかない」のです。一方で、「内部統制の整備はプロセスの分析だ」ということで、文書化を販売や購買などの業務から始めるというイメージが非常に強くあり、「商談プロセスは文書化する必要があるのでしょうか」というような質問をいただくことが少なくありません。
目標は「財務報告に係る内部統制の評価」ですから、最終的には財務報告に関係する部分だけを無駄なく押さえることが必要です。例えば、売上勘定について、総勘定元帳からさかのぼって受注伝票や出荷伝票に至る情報の流れを鳥瞰図的に把握し、販売部門で行われる業務についてはこの情報流に関連する部分に極力限定して文書化する、というやり方ができます。また、文書化についても、既存のマニュアルや文書を出来る限り活用していくことも効果的でしょう。
このように、目標に則して無駄なく作業対象を絞り込むことが、工数を掛けずに内部統制を整備するポイントです。もう1つ見落とされがちですが、非常に重要なのが全社的な統制です。実施基準案では、全社的な統制の評価はすべての事業拠点について実施する必要があるとされています。また、その評価結果が有効以上であることは、いわゆる2/3ルールの適用条件であり、運用状況の評価範囲を限定する根拠としても採用されます。米SOX法対応の事例で見ても、その作業工数は全体の5~10%程度です。このように、重要でかつ他の活動への影響が大きく、さほど工数の掛からない作業こそ、真っ先に取り組むべき課題でしょう。

富士通株式会社
GLOVIA事業本部 プロジェクト統括部長
渡辺 雅彦
渡辺:日本企業は完璧を目指そうという意識が強すぎます。内部統制もルールの善し悪しではなく、ルール通りかどうかを問題にしているわけで、できないルールを書いてしまったのではどうしようもありません。ですから、監査人とやり取りしながら落としどころを決めていくことが大変重要です。
田口:システム的な面についてはどうでしょうか。
小村:すべてのシステムを見直すことはとても不可能です。部分的な見直しや追加をするというのが考えられる現実的な選択だと思います。この際、一般会計システムのみを置き換えるというやり方はあります。
初年度で80%実現し、残りを2年、3年というスパンの中で実現していく。内部統制だけを切り離して考えるのではなく、業務全体を見ながらシステムを考えていけば、それほど重い負担にはならずにすむと思います。

富士通株式会社
コンサルティング事業本部 プリンシパルコンサルタント
小村 元
田口:トップはどのように関与すべきなのでしょうか。
根本:実施基準案は、経営者に対して、内部統制の整備・運用についての方針や手続きを定めて、その状況を記録し保存しておくことを明示しています。また、それらの文書を5年程度保存することを想定しています。ですから、経営者が責任を持って方針を定めて、宣言することなしには、内部統制の整備や評価の作業がスタートしたことにはならないのです。
パネラープロフィール
KPMGビジネスアシュアランス株式会社
執行役員マネージングディレクター
根本秀人 氏
1987年KPMG港監査法人(現、あずさ監査法人)入所。法定監査・任意監査ならびに上場支援業務に従事。1997年KPMGコンサルティング株式会社(現ベリングポイント株式会社)に出向し後に転籍。ERP導入コンサルティングや業務改善プロジェクトなどに従事。2005年2月よりKPMGビジネスアシュアランス株式会社。現在、リスクアドバイザリー・サービス担当執行役員。公認会計士。
富士通株式会社
財務経理部 テクニカルアドバイザ
俵 一雄
(プリンシパルコンサルタント)
富士通(株)入社後、本社経理、工場経理、事業本部経理を経て、関連会社(現富士通ゼネラル)、海外子会社(富士通アメリカ)ほかでの経営管理、事業管理、原価管理を実践。これらの実務経験を生かし、現在は、企業会計・経営管理のコンサルティングに従事。
富士通株式会社
コンサルティング事業本部 プリンシパルコンサルタント兼内部統制事業推進室長
小村 元
富士通(株)入社後、官公庁、自治体分野のシステムエンジニアとして、主に公共系の業務システムの構想立案、構築を担当。その後、コンサルタントとして「e-Japan」構想に対応したビジネス推進を担当。防災、BC(BusinessContinuity:事業継続性)などの対応と共に内部統制についてのコンサルティングに従事。
富士通株式会社
GLOVIA事業本部 プロジェクト統括部長
渡辺 雅彦
富士通(株)入社後、一貫して業務システムやパッケージの開発に従事。
GLOVIA会計の開発責任者。
Webセミナー バックナンバー
シーズン1 ~内部統制~
- 会計士から見た日本版SOX法実施基準
~これで安心はできない!!~ - セミナー直前レポート ~2月8日の論点は?~
- GLOVIAアラカルトセミナー開催−−実施基準のポイントとプロジェクト取り組みの勘所を具体的に解説
