この反省にたち、管理部門においては全社運動として、「組織のスリム化」「間接業務の効率化」「間接人員の直接員化」「経営のスピード化」が業務ごとに具体的な目標として掲げられ、その実現がトップダウンで推進されるに至りました。 経理部門、人事総務部門、購買部門等それぞれにワーキンググループ(WG)が結成され、目標達成にむけて活動が 開始されましたが、なかでも経理部門においてはいち早く、中堅若手を中心とした全社会計システムの再構築を目指した専任チームが結成されました。チームリーダは米国駐在から帰任してほどない新任管理職で、チームのメンバーはそのチームリーダが全社の各経理部門から選抜してきて本社経理部にWGとして組織化したメンバーです。 このチームの特徴は、みなひとりひとりが出身母体である事業組織の実態に精通していたこと、伝統的な当社の会計業務の常識に囚われない程度に若いということ、会計業務・経理処理の抜本的な改革をやりとげないと会社存続が危ういという危機意識をもっていたことなどが挙げられますが、このWGメンバの特質が実はGLOVIA/SUMMITのコンセプトの下敷きになっています。 若いWGメンバーの発想は従来の伝統的な「富士通経理の常識」を覆すものでしたが、これに対し、事務部門トップも大胆な発想で応えました。 すなわち「必要であれば過去をすべて捨ててもよい」とまでの決意を示したのです。(注1) まさに業務改革を実現するための両輪の条件である「トップの決意」と「ボトムの情熱」が揃ったわけです。
(注1) 事務部門のトップにしてみると、ある意味で自分達が今まで築いてきた世界を自己否定することになるわけで決して容易い決断ではなかったはずですが、現状への強い危機意識の表われが場合によっては「過去の否定」も止むをえないという選択に至ったものです。
当時の経理部門の仕事というのは、その9割以上がいわゆるルーティンワークという定型の事務処理・報告業務でした。 しかも、扱うデータは、コンピュータ上の電子データや印刷帳票のアウトプット、部門間でやりとりするワークシート、手書きの紙の伝票と様々なうえに、各本部で行なう経理処理にはローカルルールや例外処理が数多くあって、人間系の判断を経ないと処理できない仕事の連続となっていました。 このことは、データの繋がりの節目節目に常に「人間系の判断」および「人と人との間のデータ授受」を必要とするが故に情報の正確性についての完全な保証は得られないし、処理の即時性も求められないことを意味しました。 つまり、経理部門における業務の大半は、データの再入力と再照合という殆ど付加価値を産み出さないものに追われて終わることになり、経理部門の工数の負荷というのは相当なものになっていました。 いくら残業をしても、どれだけ徹夜をしても、仕事は終わらないし追いつかないし、経営層の要求にタイムリーに答えられない。万全の自信をもって月々の決算確定ができないし、いくら頑張っても正確な予測に行き着かない。 これを、これをなんとかしたいというのが、WGメンバー全員の根源的な願望であり熱き想いでした。
通常の基幹システム再構築のアプローチは、まずは現状分析を行い、問題点を抽出し、その解決施策を立案し、その実現のための条件整備を行なって、ある解決モデルを作成し、それをシステム化するというものです。 しかし、このWGには当時50ヶ所以上あった事業所の業務を詳細に分析することが許されるほどの時間的余裕はありませんでした。さらには、旧いしがらみのなかで運営されてきた現行システムを前提とした業務を分析することはあるべき理想型を構想する上で、障害になりこそすれ決して便益にはならない。むしろ現行システムがもつ根源的なボトルネック(障害隘路)を必ずや引きずるという危険性が高いという視点にたって、あえて詳細な業務分析からは入りませんでした。現状の問題点と思われるところには深入りせずにそこは取り合えず棚上げし、現行システムの単なる改善を目指すのではなく、また実現の可能性を窺うのでもなく、かつ経理部門内の業務効率を最優先せずに全社の最適化実現を目標として、抜本的な理想型としての「あるべき姿」を実現するためのシステム再構築を夢想するところからスタートしました。従来の会計業務の常識に囚われず様々の角度から自問自答しました。
何故、決算業務はこんなにも時間がかかるのか。そしてこんなにも人手を要するのか。 何故、経理部門が現場の明細データを見ようとしても見ることができないのか。 または、見ることができてもに何故こんなに時間がかかるのか。 何故、こんなにも多くの部門の承認印がないと経理処理ができないのか。 何故、決算処理は月末に集中するのか。 何故、ローカルルールは廃止できないのか。 何故、決算情報は各管理層に活用されていなのか、等々です。