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人事制度は会社の理念や目的必達のためのツール

社会保険労務士  真家 裕介
[2007年6月5日掲載]

規制緩和やグローバル化等の経営環境の変化は少なからず人事制度にも影響を及ぼしています。かつての儲かる仕組みは崩壊し新たな構造改革の波があらゆる分野にわたっています。人事制度における考え方もかつての年功主義、能力主義から成果主義へと変遷を続けてきました。そして、今また、成果主義へのシフトがもたらす弊害からその見直しが叫ばれています。はたして、我々は人事制度を導入するに当たってどのような基本方針を採るべきなのでしょうか。実際はそれぞれの企業の考え方や、現時点での成熟度、その他さまざまの要素によって異なり、一概に論ずることができないものではないでしょうか。
ただ一ついえることは、企業は一定の目的を持っており、その目的を達成する、つまり成果をあげる使命があるということです。その使命を達成する為の基本方針を成果主義とするのか、あるいは年功もしくは能力主義とするのか、それとも全く違う考え方とするのかが悩みの種なのです。


成果(結果)をコントロールしたければ、その結果の数字が動き出す前に必ず動く数字をコントロールするのが本来のマネージメントであるはずです。
収穫を上げたければ、肥料を撒かなければならない、その前に種を植えなければならない、その前に土地を耕さなければならない、つまり100という収穫を上げたければそのプロセスで上げるべき数値やレベルをコントロールしなければならないのです。ただ単に「いくら売って来い、何個売って来い」ではマネージメントにはなりません。売れる前に上がるバロメータを上げなければいけないのです。
もちろん最終的にどれだけ売らなければならないかの目標(ゴール)設定は重要です。ただし、このゴールは適切なものである必要があります。
また、目標は達成すること、そしてその目標を達成することに喜びがともなうことが重要だと思います。このゴールを目指して、職務能力を磨いたり、行動特性の分析を行ったりしながら、ゴールに向かうプロセスを管理して最終的にゴールにたどりつくのではないでしょうか。これら一連の流れの中で、どこに力を入れるのかが人事制度の基本方針を決めることに他ならないのではないでしょうか。


ある会社は、「直接売上などの結果指標は評価せず、顧客満足度の調査に基づいてその指標のみを評価します。」別のある会社は「能力やスキルを特に重視して評価します。」また別の会社は「顧客満足やスキルよりも売上や粗利が重要でそこに評価のポイントをおきます。」いずれが正しくていずれが間違っているということはありません。
また、本来的には結果や能力やプロセスだけを取り上げて評価するのではなくそれらの要素を総合的に勘案して評価を行うべきだと思います。能力主義だとか成果主義というのは会社の重要視するポイントを示すものでメッセージとして伝わりやすくするためにタイトルをつけられているものにすぎないはずなのです。
しかし、よく勘違いされているのは、会社能力しか評価しないとか成果しか評価されないと思っているケースが非常に多く、運用する人事部門ですらそのように勘違いしていることもあるようです。
また、能力主義で行くのか成果主義で行くのかはその企業の成長ステージごとに変わるものでもあるといえます。

例えば、創業期の事業では「クライアントの獲得」、成長期の事業では「クライアントの満足度」、成熟期の事業では「クライアントからの収益率」といった具合に成長ステージごとに重要視されるところが変わってくるものです。自ずと、創業期には待ったなしで成果が求められるので、即戦力の中途社員に年俸制で成果を要求することになり、成長期から成熟期には成果を求めると同時に知的資本の充実を図るために能力が重視されるようになると考えられます。

人事制度を再考するに当たって、その基本方針を如何にするかは、企業の考え方や会社の現在における成長段階がどんなステージにあるのかによって様々であるといえます。
ただ、いえることは人事制度というのは会社の理念や目的を達成する為の「ツール(道具)」の一つであるということです。よい人事制度を作ること即ち「道具」を磨くことが目的ではなくて、その先の企業の理念や目的を達成することに意義があるのです。
したがって理念や目的から導き出されるのが経営の諸施策であるのであれば人事制度の基本方針もその例外ではないはずです。


著者プロフィール

真家 裕介 (マイエ ユウスケ)
社会保険労務士

昭和39年10月 東京都杉並区出身
平成元年3月 明治大学文学部史学地理学科 卒業
平成11年9月 真家社会保険労務士事務所 新宿区新宿1丁目に開設、現在に至る

人事労務、公的助成金、年金等に関することが専門。
人事制度の最新情報や退職金問題、就業規則その他各種人事労務に関するセミナーを数多く担当。

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