経理業務の有効性と効率性
公認会計士 藤田 博司
[2008年4月24日掲載]
伝票の起票は非効率

従来からの一般的な経理業務に対する考え方では、各部門で原始帳票等を基に台帳や日報等を作成し、それらをまとめたものを経理部門に回付し、経理部門はその集約されたデータやその内訳について伝票を起票、帳簿を作成するという流れがありました。
近年ではほとんど全ての企業に経理処理のためのコンピューターが導入されていますが、基本的な流れは上記のとおりで、伝票を起票した後にそのデータを入力して帳簿を作成している企業が多い状況です。
各部署で作成された経理処理用の元データは経理部門で再チェックされることにより、データの信頼性が高まりますが、その一方で、経理システム以外のシステムで入力済みのデータに関して、経理部門で改めて伝票を起票して経理システムに入力するという業務は、なんだか重複しており、非効率ではないかという印象があります。
例えば経理システム以外で入力したデータのうち、経理システムに入力すべきデータだけ自動で選別してシステム間でデータを直接受け取り、加工することができたら、経理部員の作業はそのチェックで済むことになりますので、大幅な業務の効率化が達成されることになります。
すなわち、ここで言いたいのは従来全て手作業によって行っていた業務が、IT技術の進化に伴ってコンピューターに一部とって変わられることが可能になっていることを充分認識すべきだということです。
経理業務の効率化

不正やミスを防ぐためなど、必要な統制レベルを維持しつつ業務を効率化して、自由になった時間をより生産性の高い業務にどれだけ振り向けられるかが、各企業に問われている時代だということもできるかと思います。
コンピューターと人間はそれぞれ得意とする領域、不得意とする領域があり、お互いに補完しあうことでローコストかつハイパフォーマンスな投資や運営が可能となります。その効果や必要な投資額などは各企業や各職能によりまちまちですが、経理部門はその効果が顕著に現れる部門であると一般的に考えられています。
すなわち、先ほどの例のように各部署で入力済のデータを経理で再入力するというのは、いかにも非効率である印象がぬぐえません。経理部門によるチェックといっても合計金額の照合や貸借の一致確認など判断を伴わないチェックに過ぎないことが多く、処理したデータに不正や誤りが含まれていないかなどの実質面はむしろ現場で行ったほうが効率性が高く、実際もそのケースが多いでしょう。
求められる経理業務

このように考えると、経理部門は再入力といった手間のなかでチェック機能を発揮せずに、経理システムから出力した分析資料をもとに経理独自の観点から分析したり、現業部署に対して資料を提供するなどの手間をかけるほうが、管理面からも有効であると考えられます。
もちろん振替伝票の起票を否定するものではありませんが、業務の安全性と効率性の観点から一度自社での経理業務を見直してみる機会を設けるべきかと思います。多くの企業では、先輩は上司から教えられた従来からの業務処理方法に従って業務を行っているケースが多いと思いますが、それはあくまで数年前、数十年前に考え出した方法であって現在も有効かつ効率的な方法であるとは限りません。
第三者の観点から自身の業務を見直してみると以外にチェックが重複していて不効率であったり、逆に重要な点でノーチェックとなっていてミスが生じやすい方法で行ってきたというような発見があるかもしれません。
経営者・管理者にとって大事なことは、まず業務が不正やミスが起きにくい方法でなされることを確認したうえで、可能な範囲で業務を合理化し、それによって生じた新たな時間をどれだけ企業価値増大のための業務に振り向けることができるかです。
現場作業では従来までも生産合理化等で検討されていたことを、経理においても本格的に行う時代が来たといえるかもしれません。
著者プロフィール
藤田 博司 (フジタ ヒロシ)
公認会計士1993年3月 中央大学法学部法律学科卒業
1999年10月 朝日監査法人(現 あずさ監査法人)横浜事務所入所
2005年6月 あずさ監査法人横浜事務所退所、藤田公認会計士事務所 開設中堅企業の株式公開支援、内部監査などを担当。内部統制等のセミナー講師を数多く担当している。
