「失敗しない」ERPシステム構築法
第1回 「ERPシステム構築の失敗の原因」
本コラムではERPシステムとは、基幹業務システムのことを指します。
[2007年3月27日掲載]

ここ数年、基幹業務システム、特に販売管理システムの再構築を検討される中堅企業様が多いのではないでしょうか。原価管理や各種実績把握を充実させるために販売管理システムを見直し、課題解決を進めたい企業様が多く見受けられます。
そこで、第1回は、システム再構築の手段としてERPパッケージを導入する場合に、「失敗」とならないため、陥りやすいケースをまとめ、失敗の原因について探ってみました。
ERPといっても範囲や解釈には広い幅があります。企業様毎に求めるERPの形は違ってきます。ですので、どんな場合が失敗なのかも一概には言えませんが、「企業様が求めるERP」と「導入しようとしたERP」にアンマッチが起きる場合、つまり、ERPの導入を決定しその目的を達成するためのシステム構築がうまくいかなかった場合に失敗が発生することになります。
失敗の原因は、目的が不明確または目的がぶれるなどのお客様側の問題や、ニーズを誤解したり、業務の理解が足りないなどのベンダー側の問題に分かれますが、それらが重なって意思疎通が不十分になり、過剰なシステムの構築へとつながり失敗する場合が多いようです。
また、他の要素として、運用を含めたコーディネート不足、推進体制が弱体、業務システム間の整合性がないなどもあげられます。以下に、失敗の典型的な例を3つほどご紹介します。
設計時での要求のふくらみ
多くの導入作業は、設計で一端区切りお客様と内容の合意をし、開発/導入の工程に入ります。設計段階で、この機会にと色々な課題を盛り込み過ぎて当初予算を大幅に上回ってしまうことがよくあります。
現場が対応できない(運用できない)
データ分析のためにと細かな分類を設定しようとしたあまりに、システム稼働後、現場の入力担当者の入力漏れやミスを誘発し、データの信憑性がなくなってしまう場合があります。
維持できない
効率化=自動化と思うばかりシステム規模が大きくなった。プログラムや周辺機器の維持管理にも相応の費用が必要です。環境変化に改修がついていかないと使えないシステムになります。
こういった点を企業様自身も冷静に受け止めベンダーの提案が過剰になっていないか、きちんとコーディネートしてくれているかを見極めながら推進する事が大切です。
それでは、何故このようなケースに陥ってしまうのでしょうか。1つには、ITの役割の変化があります。以前(1970年代)は、ITの役割は、作業の自動化やビジネスのサポートでした。しかし、近年は、プロセス改革やビジネス変革への期待があります。従って、成功すればインパクトは大きいのですが、過剰な期待から満足度が低くなり失敗プロジェクトになってしまいます。
ERPシステムの導入目的
ERPの範囲として、部門レベルなのか全社レベルなのか。また、単なるシステム更新なのか、業務見直しも含むのかという事で位置づけが変わってきます。究極の目的は、全社レベルで業務プロセスの見直しを含めてシステムを見直す事ですが、一気にそこまで行くことはなかなか難しいと思います。
目指すは全体の最適化ですが、現実的には、部門単位で段階的に導入/改善を進めていく事になると思います。いきなり最終目標を目指すと達成レベルが高くなるので、パワーもコストもかかりリスクも高まる訳です。部分からの導入であれば、ハードルは低くなりますので、ステップを分けて目標設定し進める方が良いでしょう。
プロセス改善というのは、大上段に構えて行わなくても選定したパッケージの機能や運用に合わせる事でも、大なり小なりの改善をしているはずです。逆に言えば、従来の業務を重視してシステムを合わせるか、システムありきで業務を合わせるかという方針決定も必要でしょう。大まかには、生産管理や販売管理システムは前者で会計/給与などの社内システムは後者の要素が強いと思います。
ERPって何?
ERPは、ERPパッケージを導入することが目的ではもちろんありません。ERPとは、経営活動を行う手法・コンセプトであって、システムはその為のツールです。従って、システム導入で問題が解決するのではなく、システム見直しをする検討プロセスで問題が解決される場合が多いのです。
まずは、経営資源を最適に配置し効率的な経営を行える環境作りをし、その上で企業様毎に何処を人手で、何処をシステムで行うかを考えてからシステムの役割をイメージすると良いと思います。経営として求める全社レベルでの統合・最適化を進められるツールとして目的に合致したシステムを選択する事が必要です。
ERPシステムを分解してみると例えば、下図のような機能の集まりになります。市販の業務パッケージ(生産情報・販売情報・・・)に着目してみると重なる機能が多くあります。赤い部分は企業様固有のニーズが強く手を加える事が多い機能です。
製品毎に包含する機能が違っていますので何をツールとして選択するかが後の費用や運用に大きく影響してきます。

例えば、生産計画や所要量計算のシステム化が不要なら販売管理をベースに手を加えた方がスムーズに行くケースもあります。
ここまで、失敗の原因からツールとしてのERPパッケージについて述べてきました。
まとめてみますと、
- 経営目的を明確にし、段階的に進めること。
- ERPパッケージは目標達成のツールです。目的に添った選択をすること。
以上を留意して取組んで頂ければと思います。
次回は、実際にシステムの再構築を行った企業様の事例をもとに、陥り易い罠について考察をしていきます。
著者プロフィール
佐々木 公也 (ササキ キミヤ)
株式会社富士通中部システムズ- 1981年 富士通株式会社 入社 製造業様フィールドSE
1995年 (株)富士通東海システムエンジニアリング(現 富士通中部システムズ) 転社
1998年 同社 東海システム事業所にて、地場中堅企業様向けに基幹業務パッケージを適用したシステム構築の導入に従事。
2002年 同社 ERPソリューション部に異動し、中堅企業様向けERPパッケージの適用推進~サポートを担務。 - 社内外のオープンパッケージを吟味、評価し地域のお客様のサポートを実施。
以降 同担務を中心に現在に至る。 - 担当企業様の多くは、ITの専任要員が設けられていない企業様が多く「お客様の現状と課題を自らが感じ、効果を伴に実感する」をモットーに、具体的に提案・提言型のサポートを行っていくように、取組んでいます。
「失敗しない」ERPシステム構築法 (全3回)
- 第1回 「ERPシステム構築の失敗の原因」 [2007年3月27日掲載]
- 第2回 「事例からの教訓」 [2007年4月3日掲載]
- 第3回 「まとめ・成功のポイント」 [2007年4月10日掲載]


