「失敗しない」ERPシステム構築法
第2回 「事例からの教訓」
本コラムではERPシステムとは、基幹業務システムのことを指します。
[2007年4月3日掲載]
今回は、実際にシステムの再構築を行った企業様の事例をもとに、陥り易い罠について考察をしていきます。
オフコンからの移行
以下の事例では、既にお取引のあるお客様のシステム再構築にあたって方法論がまとまるまでのプロセスについてご紹介します。

これまでは、部門毎のニーズに応じパッケージをベースにシステム構築がなされていました。システムの老朽化や業容の変更に伴って、管理統計資料の作成方法の見直しが必要となってきました。必要とする情報が点在していたり、不整合があったりと手作業での作成に限界を感じてみえました。そこで、システム再構築の検討が始まりました。
自社のオフコン上のパッケージで構築されていましたので、相当するWindows版のパッケージへの移行が近道であり、お互いリスクも少なく再構築ができるメリットがありました。その方向で、環境変化への対応事項を盛り込み具体案に落とし込んでいきました。しかし、価格算出の段階でお客様の予算を大幅に上回ってしまい、他ベンダーを含めての再検討を迫られました。
移行目的は何か
稼動中のシステムからの視点ではなく、何が課題・目的なのかを改めて振り返り考えてみました。
- システム老朽化に伴う最新のオープンプラットフォームへの切替
- 業務システム間の二重管理の廃止と実績情報の統合化
- 事業環境変化への対応
この観点でみれば、当初提案では解決がしにくいテーマがあった事に気づき、これまでの構成をリセットして検討した結果、下図のようなシステム構成で対応することで合意にいたりました。

システムを単純に置き換えることで、マスタ間の整合性をとる機能を追加したり、見込み生産のため計画系はあまり重要視しないのに生産管理を継続導入したり、無駄なコストが見込まれていたことがわかりました。
システム関連もシンプルになり予算内に納まり継続しお付き合い頂けることとなりました。
予算内でより良い解を求めるには、割り切りをもって切り分ける事が大切です。また、同じベンダーとの付き合いも長くなると信頼から緊張感が薄れてしまう事もあるかもしれません。お互いに牽制し合い目的に合ったベストチョイスかを充分に確認することが大切でしょう。
システムのリニューアル
次の事例では、既製の販売管理システムから業態と目的に合ったシステムへの見直しを行った企業様の例をご紹介します。

建材や金属の加工及び販売を営まれている企業様です。業種の特色として、少量多品種であったり資材や材料が、金属板や長尺の形状のため部分的に使用した材料等の在庫管理はシステムでの管理が困難でした。
また、システム見直しにあたっては、
- 単品管理とリアルタイム経営
- 余剰在庫の削減
があげられていました。
推進にあたって、社長自らが目標として掲げたテーマ実現にむけてシステム化に向けての事前準備(商品コードの整備、従業員向けパソコン教育実施等)を計画的に行った点やパッケージに業務を合わせ、カスタマイズは入り口(Fax受注対応)と出口(受注承認)に絞った点と金属板等の材料管理はあえてシステム化せずに現状を踏襲し目視によるExcelでの管理にすることとした点が確実に成果をあげられたポイントです。
「製品在庫が見えるようになった」「1年以上売れていない死に筋商品の把握ができる」といった効果を評価して頂いてます。
成功の要因
このお客様のシステム構築が成功した要因は、
- 社長がシステムに対する要求事項を明確にし推進体制を整備した
- お客様自身が率先して、商品コードを整備するなど事前準備を確実に遂行した
- システム化する業務と手作業で行う部分を設計段階で明確にし開発を行った
以上の3点があげられます。
ERPシステムの導入方式
二つの事例をご紹介しましたが、システムを提供する私共も留意しなくてはならない点も多々あります。ほんの一例ではありますが、機会あれば思い起こして頂ければと思います。
さて、ERP導入には、2つの方式/考え方があります。どちらが良いと言うことではなく、どちらがフィットするかが大切になります。ただ、表にも記載されているように中堅企業様が取組む場合は、ステップ方式の方がリスクを低く確実に構築できるかと思います。
| ビックバン方式 | ステップ方式 | |
|---|---|---|
| 特徴 | 全社業務を一括してERP業務手順に置換え、会社資源のリアルタイムな把握と分析を可能とする。 | 全社業務のうち、優先順位にもとづき順次ERP業務手順に置換えていき、既存システムとのインターフェースを構築しながら移行する。 |
| プロジェクトの 特徴 |
現行業務の標準化、見直しがプロジェクト中に多く発生し、強力なリーダーシップが必要。 | 優先順位の高い業務より実施するため、業務の標準化、見直しがビックバン方式と比較すると比較的スムーズに移行することが可能。 |
| コスト | まとまった投資が必要となる。 | 段階的な投資とはなるが、既存システムとのインターフェース費用が発生し、次期ステップには必要なくなる無駄な投資となる。 |
| 傾向 | 大企業が主に採用。 | 中堅、及びオーナー企業が主に採用。 |
いずれにしましても、企業様の事情(目標、予算、事業環境等)や関連パートナーとの体制といった個別事情により選択肢は多岐に渡ります。プロジェクト推進にあたって、充分に議論し着手されることが大切です。
次回最終回は、企業様がERPを導入する場合の手順や留意点についてまとめます。
著者プロフィール
佐々木 公也 (ササキ キミヤ)
株式会社富士通中部システムズ- 1981年 富士通株式会社 入社 製造業様フィールドSE
1995年 (株)富士通東海システムエンジニアリング(現 富士通中部システムズ) 転社
1998年 同社 東海システム事業所にて、地場中堅企業様向けに基幹業務パッケージを適用したシステム構築の導入に従事。
2002年 同社 ERPソリューション部に異動し、中堅企業様向けERPパッケージの適用推進~サポートを担務。 - 社内外のオープンパッケージを吟味、評価し地域のお客様のサポートを実施。
以降 同担務を中心に現在に至る。 - 担当企業様の多くは、ITの専任要員が設けられていない企業様が多く「お客様の現状と課題を自らが感じ、効果を伴に実感する」をモットーに、具体的に提案・提言型のサポートを行っていくように、取組んでいます。
「失敗しない」ERPシステム構築法 (全3回)
- 第1回 「ERPシステム構築の失敗の原因」 [2007年3月27日掲載]
- 第2回 「事例からの教訓」 [2007年4月3日掲載]
- 第3回 「まとめ・成功のポイント」 [2007年4月10日掲載]


