「失敗しないERP」シリーズ第4弾
失敗しない会計システム構築について
第3回「管理会計をテーマとする会計システムの構築」
[2009年5月14日掲載]
会計システムを再構築する際に、管理会計の充実をテーマに挙げられる企業様は多くあります。周知の通り、管理会計は、企業内部の経営管理、活動管理のために行われるものであり、経営者の欲する情報を提供することが目的となります。よって財務会計に比べてシステム化における自由度が高く、企業様によってはその構築範囲に悩まれる場合もあるようです。
ここでは、管理会計の範囲を次の3ステージに分けて、失敗しないための条件を整理していきたいと思います。

第1ステージの管理会計
会計パッケージが普及し始めた頃の管理会計では、次の3表がシステムで出力できれば良しとされていました。
1.部門別損益計算書(単月/累計)

2.損益計算書部門別月別推移表

3.損益計算書部門別比較表

これらの帳票では、勘定科目の表示において全ての経費科目を出力するのではなく、5から10程度の重点科目を表示するほうが見やすくなります。
第1ステージの管理会計では、財務会計のデータを加工するだけであるため、企業様が求める管理会計機能が実現できるか否かは、パッケージが保有している機能への依存度が大きくなります。既に、何らかの方法で管理帳票をお使いになっている場合が多いと思われますので、パッケージ選定の段階から実際の帳票レイアウトを提示されて、具体的な実現手段、操作性などを事前に確認されることをお奨めします。
第2ステージの管理会計
管理会計に必要なデータの収集
第2ステージになると、財務会計システムのデータだけでなく、販売管理システムなどのデータが必要になってきます。
第1ステージでの売上/仕入に関連する仕訳の計上は、集約したデータを月次で処理します。たとえば〔売掛金/売上〕の仕訳の場合、販売管理システムでは、商品番号、単価、数量、得意先などの明細を発生データで持っていますが、財務会計上は月単位での売上の合計値が把握できればよいので、これらの販売管理システムの明細を集約した状態で仕訳データを作成して連携します。企業様によっては集約しているため仕訳の数が少なく、手入力にて仕訳を計上しておられる場合もあるかもしれません。
ところが、第2ステージの管理会計システムでは、経営者や管理者が意思決定を行うための道具として、利益、コスト、キャッシュフロー、予算、といったキーワードが必ず登場します。
たとえば、利益管理をシステム化する場合、次のようなポイントが考えられます。
| ポイント | 例 |
|---|---|
| 視点 | 組織:全社>支社>支店>セールス |
| 商品:大分類>中分類>銘柄>アイテム | |
| データ種別 | 実績、予算、過年度、予測 |
| タイミング | 日次、週次、月次、年次 |
| 必要データ | 売上、売上原価、各種経費、非会計情報 |
| ルール | 按分/配賦のルール |
これらのデータを会計システム上で加工・分析するためには、販売管理システムからデータ連携をする際に、集約データではなく、明細に近いレベルでのデータを連携することが必要になってきます。
明細に近いレベルというのは、明細レベルでは膨大なデータ量となり、販売システムと同様のデータを会計システムに持つことになり、会計システムの資源の枯渇や性能劣化を招くことになるからです。
そこで、販売管理システムの明細を日別、商品コード、得意先コードなどで集約し、たとえば売上計上の仕訳に付与して、会計システムに仕訳を連携します。
ここまでのデータで見えるのは商品別や得意先別の粗利までで、販売管理システムと同レベルです。
これに、会計システムでしか把握することができない物流費や販促費などの重点経費科目に、商品コード、得意先コードを付与しておくことにより、商品や得意先別の営業利益を把握することができます。
会計システムに仕訳を計上する際に、仕訳明細単位に設定できる管理コードなどの領域に、商品コードや得意先コードを入力するしくみが必要となるわけです。
第2ステージのアウトプットイメージ
第2ステージではどのようなアウトプットになるのでしょうか。
利益管理をシステム化する場合の分析視点と利益範囲をまとめると次のようになります。

第1ステージでは、組織の分析視点が対象範囲でしたが、第2ステージでは商品や得意先などの分析視点での出力が必要となります。
管理会計システムはマネジメントに役立ってこそ意味を成します。
管理会計の中で利益管理は最も重要な要素ですが、利益の増減には必ず理由があります。売上が伸びたのか、コストが抑制できたのか。コスト抑制の原因は、製造活動なのか、販売活動なのか。販売活動だとすると、どの得意先なのか、あるいはどの製品なのか。など、理由となる事象の発生源まで遡って、悪い場合だけでなく結果が良くなった理由も分析できなくてはなりません。
そこで、第2ステージの管理会計システムでは、収益と費用を仕訳の明細にまでドリルダウンできるしくみ、つまりデータベースの構造とドリルダウンできる機能が必ず必要となります。
ドリルダウン機能があれば、上表の任意の分析視点で数字を把握することができ、さらにその数字を構成する要素を探りたい場合は収集したデータの明細ベースまで深堀することができるわけです。
利益管理は第1ステージのP/L科目の範囲で結果が得られますが、第2ステージではさらにB/S科目にまで分析の範囲を広げることを検討されてはいかがでしょう。
B/S科目を取り入れることにより、事業部制への対応が可能になります。社内金利を活用して、事業部単位の経常利益までを把握することができます。
最終回は、第3ステージの管理会計について考察をしていきます。
(第4回「第3ステージの管理会計システムの構築」につづく)
著者プロフィール

杢内 勉 (モクウチ ツトム)
株式会社富士通関西システムズ
1984年 株式会社富士通関西システムエンジニアリング(現 富士通関西システムズ)入社。
前職の経験を活かし、経理部現場の視点から数多くの業務改善コンサルを実施。
1991年 組立製造業での輸出入が中心の会計システム構想立案およびシステム構築。
開発した外貨システムは後の会計パッケージの外貨システムのモデルとなる。
電子帳簿保存法、キャッシュフロー経営、内部統制などのセミナー講師も多数務める。
<得意分野>
- グループにおける予算策定ソリューション
- 経理部門の効率化のための業務改善指導
- 経営管理システムの構築指導
「失敗しないERP」シリーズ第4弾
失敗しない会計システム構築について
- 第1回「現在の業務運用を改善する場合のポイント」 [2009年3月3日掲載]
- 第2回「どのパッケージ製品を使うかよりもどのように導入設計をするかがポイント」 [2009年3月31日掲載]
- 第3回「第3ステージの管理会計システムの構築」 [2009年5月14日掲載]
- 第4回「第3ステージの管理会計システムの構築」 [2009年5月27日掲載]


