「失敗しないERP」シリーズ第2弾
中堅規模の食品製造業における失敗しないERP構築について
第1回「経営レベルで目的とすること」
本コラムではERPシステムとは、基幹業務システムのことを指します。
[2007年9月20日掲載]

中堅規模の食品製造業に限らず、目的をあいまいにしたままで、基幹業務システムの構築(ERP構築)を行うと、「経営者や現場が必要とする情報がない」とか「経営や現場も何も変わっていない」「何が解決できたのか分からない」などの失敗に陥ってしまいます。
失敗しない基幹業務システム構築のためには、まず経営レベルでなすべきことを決めてから、その実現のために業務プロセス面で何を行っていくかを設定し、それを支援するためにどうパッケージを導入していくかを考えていくことが大切です。
この掲載記事では、私の幾多もの中堅食品製造業のお客様におけるシステム導入SE経験と、企画コンサルティング経験をもとに、そのポイントを目的設定、業務プロセス、パッケージ導入の順で具体的に述べていきます。
基幹業務システム構築を現在検討されている方、および現在実施されている方の参考になれば幸いです。
第1回では、食品製造業の特性と課題を述べ、それを受けて基幹業務システムの構築を行うにあたり、何を経営レベルで目的とするかについて述べていきます。
食品製造業の概観
食品製造業は、2005年経済産業省「工業統計表」によると製造出荷額が22兆円であり、製造業全体に占める割合が7.6%を占めており第4位の産業規模を誇っています。また景気変動による出荷額への影響が少なく、安定的な産業であります。
一方で従業員50名から300名の企業規模の市場シェアは51.3%であり、中堅規模の企業が産業の中心となっています。また、一人当たりの出荷額や、売上額から材料費をひいた付加価値額などは製造業平均の6割程度に過ぎず生産性拡大が難しい産業でもあります。
食品製造業の課題
業界の課題としては、消費者の食の好みの多様化に答えるため、魅力がある多様な商品の品揃えと、開発サイクルが短い商品開発が必要となります。それを消費者が納得する価格で提供する必要があります。
しかしその反面、食の安全安心志向の高まりによる商品のトレーサビリティ対応や賞味期限管理など商品を管理する工数が大きくなっており、売上割引や現物添付、広告宣伝など商習慣に関連し発生する販促費も大きく、小口物流化による物流費も増大しています。そのため、恒常的な原価の高留まり状態となっており、売れているのに儲からない状況が続いています。
そのため、多くの企業が、原価削減を目的とし生産工程の見直しや、生産工場の再編・整備、海外生産品の導入、販売物流の再整備などに取り組んでいます。
儲かる企業体となるためには
以上述べてきました業界の課題を背景にして、中堅規模の食品製造業においては、基幹業務システム構築に取り組む際には、いかに儲ける企業体に変えていくかを考えることが大切です。
儲かる企業体となるためには、企業活動を行う上での「費用と収益の構造」を定義し、原価と貢献利益を明らかにする必要があります。つまり【図1】のように、売上原価や物流費、販売促進費などの発生費用項目と発生部門を明確化し、得意先別や課別さらには担当者別の貢献利益や営業利益を明らかにすることです。

【図1 費用と収益の構造例】

【図2 儲けるための見える化モデル】
「費用と収益の構造」を明確化した上で、仕入、生産、物流、販売の個々の業務活動と発生する費用をひもづけし見える化することで、会計決算書から、問題が見え、改善箇所が見え、改善活動を行い、改善結果が見えるという「儲けるための見える化モデル」【図2】ができます。
部門責任の明確化
先ほど述べたモデルを遂行する上で忘れてはならないものが、「部門責任」です。各部門において、「仕切価格制度」による利益責任や損益責任を含んだ基本責任を明確化し、全社で共有化したなかで、いかに収益を増やし在庫を減らしていくかを考えていくことが大切です。
例えば、購買部門は、安定供給、購入価格、材料在庫に責任をとり、製造部門は、品質、納期、製造損益や仕掛品在庫の責任をとり、営業部門は、営業利益と回収責任、製品在庫責任をとるといったことです。
以上述べてきましたように、企業における費用と収益の構造を明確にし、さらに仕切価格制度に基づく部門責任を明確にした上で、「儲かるための企業モデル」を実現していくことが、経営レベルで目的とすべきことであります。

【(参考) 仕切価格制度について】
次回は、このモデルを活かしていくために業務面で何を行っていけばいいのかを述べていきます。
著者プロフィール
深井 幸三 (フカイ コウゾウ)
株式会社富士通総研- 1982年 (株)富士通関西システムズ入社
組立業、装置業顧客における生産管理システムの企画・開発 - 1996年 ラインマネージャー製造現場コンサル、SCM構築コンサル
- 2007年 (株)富士通総研出向
中堅製造業顧客を対象としたSCM企画コンサル活動 - 現在の主な活動内容
装置業、加工業、組立業のエンジニアリングチェーンとサプライチェーンにおける業務効率化を目的とした業務改革を伴った情報システム導入企画コンサルティング。
利益体質改善のための販売活動、生産活動における部門横串での製品別、顧客別の原価の見える化コンサルティング。
「失敗しないERP」シリーズ第2弾
中堅規模の食品製造業における失敗しないERP構築について
- 第1回「経営レベルで目的とすること」 [2007年9月20日掲載]
- 第2回「業務プロセス面で何を行っていくか」 [2007年10月4日掲載]
- 第3回「基幹業務システム構築におけるパッケージ導入の留意点」 [2007年10月18日掲載]


