
生産性の向上のために「5S・3定」(注)や「ムダ取り」が非常に大切であることをこれまでに述べてきました。最終回となる今回は、いっそうの効率化をめざすために大切なポイントとなる「見える化」、さらにその効果を盤石なモノとする「IT活用」について、寺崎氏に語っていただきます。
異常が見えれば、対処が早い
工場では情報やモノの流れが絶えず変化しています。それらが問題なく順調に流れている時もありますが、むしろ現場というのは1日仕事をしていると往々にして異常が発生するものです。

場合によって機械がトラブルを起こしたり、部品が足りなくなったりします。また午前中に100個製造しないといけないのに、現在どのくらい作ったか分からない。足りないのか、作りすぎてムダになっているのか、その進捗が見えない。あるいは異常在庫が見えず、ものが停滞してしまっている、不良の発生状況が見えない。設備の稼動状況が見えない、部品や材料の供給のタイミングが分からない、把握できないことや見えないことによる作業の遅れ、製造のムダ、品質や安全の低下などの異常は数多くあります。こうした異常は、すべて「見える化」しなければなりません。異常が見えれば、アクションなど対応がより迅速にできるようになり、結局は工場全体に関わるトータルのムダ取りが可能となり、いっそうの効率化が図れるのです。
では、どのようにして見える化を行なっていくか。やはりここでも「5S・3定」の考え方がベースとなります。
ライン看板や置場の看板などで「3定」を徹底すべきと第1回目にお話ししましたが、そのような表示がなかったら例えば新人にはツールや材料などをどこに置くのか分かりません。勝手にものを置かれてしまったら、本当に必要な時にものが探せなくなります。
そのために区画線が大切です。工場には製品などのものを置くべき場所にきちっと区画線を引き、そこ以外には絶対にものを置かないようにします。こうすることで、通路などにものが置かれてしまい「5S」が崩れてしまうことを防ぐことができます。そうした意識を追求していくと、ドアの開閉線を書くところまで行き着きます。そのドアが手前に開くのか、奥に開くのか、ドアの移動範囲を線で床に表示してしまうのです。そうすることで、ドアの開く場所にものを置くことが防げます。そこまで徹底することが必要です。
また形跡管理といって、ニッパーやスパナなどの保管場所には、そのシルエットを表示しておき、どこに何が保管されているか、どのツールが使用中か、ひと目で分かるような工夫も必要です。こうすることで、間違ったツールを使うなどのトラブルも予防できます。
先入れ先出しも見える化をする必要があります。例えば200個連続でモノを作ったとします。100個目に金型が異常を起し、101個目から不良になっているかもしれないという状況で、その200個の製品を製造順に関係なく使ってしまうと不良が流れてしまいます。そうではなく先入れ先出しを行うことで、不良のロットが特定できトラブルも防げます。つまり、ISO9001などで求められているトレーサビリティが確立できるのです。
JITとITは、製造業を進化させる両輪
「5S・3定」「ムダ取り」「見える化」これらの追求で徹底的に効率化の図られたモノづくりの現場を日々、動かしていくために、いまやITインフラはなくてはならないといえます。

実際、どのようなJITの生産ラインを組んだとしても、生産をする順序やどの製品をいくつ、いつまでに作りなさいという情報は全部IT情報から伝えられます。ITで伝達された情報によって、実際にものを動かすのはJITラインですから、それをないがしろにすることがあるとせっかくの情報も活かされません。ITから今日5個作れという指示があるのに、実態として5個作る能力がないということではジャストインタイムで製品は出ていかないわけです。
アメリカではPDM(プロダクト・データ・マネジメント)やERP、APS(アドバンスト・プランニング・アンド・スケジューリング)など、ビジネスのIT化にいち早く取り組みましたが、なかなかうまくいきませんでした。IT化と並行してJITを手本とした生産方式を整備していった結果、ようやく企業力の向上に結びつくようになりました。日本でも同様で、1個流しではなくダンゴ生産、仕掛りや不良などもあるといった古いままのモノづくりをしている工場に、いくらITを導入してもなかなか思うように工場は動きません。JITといった体系的な生産体制の整備があってはじめてITは威力を発揮しますし、ITがうまく動き出すことでJITの効果もますます高まる。この両者はまさにクルマの両輪といえます。
ですから、JITによりある一定の完成度を達成した製造ラインを実現できた場合、やはりITインフラも最新のものを取り入れるべきです。最新のITを取り入れることで、JITラインの威力がより発揮され、生産効率も高く安定する。そうしたシナジーが製造業に活力をもたらし、“元気企業”を生む原動力になるのです。
(注)5S:整理、整頓、清掃、清潔、躾のこと。3定:定位、定品、定量のこと。
著者プロフィール
寺崎 赫(てらさき あかし)
ジット経営研究所株式会社 コンサルタント
- 経歴
昭和42年 金沢大学工学部精密工学科卒業
昭和42年 株式会社日立製作所入社
平成 3年 生産技術部長就任
平成 4年 JIT推進室長を兼務
平成 7年 国産電機株式会社に転属、製造本部副本部長 兼生産技術部長 兼JIT推進室長に就任、 インド合弁会社India Nippon Electricals LTD.取締役に就任
平成17年 国産テック株式会社 代表取締役社長に就任
平成20年 ジット経営研究所株式会社でコンサルタントとして活動

- JIT指導

- 日立製作所、国産電機、及びその協力会社でJIT指導
日立製作所(自動車機器事業部)の3回に及ぶJIT大賞受賞をプロモート - 国産電機の海外合弁会社(インド、中国)でJIT指導
インドLucas-TVS社の3回に及ぶJIT大賞受賞を支援 - 国産電機部品、国産テックでJIT指導
- ジット経営研究所にてコンサルタントとしてJIT指導
- 日立製作所、国産電機、及びその協力会社でJIT指導
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元気企業になるためのモノづくり現場改革実践事例
生産現場の見える化と課題解決に向けて
- 第1回:JITこそ企業力を高める原動力
- 第2回:5Sのないモノづくりに、発展はない
- 第3回:ムダを見つける、徹底して取り去る
- 第4回:見える化とITで、さらなる進化を
[ 掲載日:2009年6月24日 ]
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